夏の暑さが落ち着いて、「ようやく走りやすい季節!」と思ったのに、
「走りが重い」「疲れる」。そう感じることってありませんか?
陸上界隈でも「涼しくなると疲れが出やすい」と言われています。
実はこれ、“疲れ”ではなく、季節の変化に体がまだ順応しきれていないサインかもしれません。
夏に“暑さに慣れる”=**暑熱順化(しょねつじゅんか)のように、
実は“寒さに慣れる”=**寒冷順化(かんれいじゅんか)**という働きがあるんです。
この変化にうまく対応できるかどうかで、秋冬の走りやすさが大きく変わってきます。
寒冷順化とは?
夏の暑さに体が慣れていくことを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といいます。
暑い時期、私たちの体は熱を逃がしやすくする方向に変化していました。
たとえば――
・汗をかきやすくして体温を下げる
・皮膚の血流を増やして熱を放出する
・心拍数が上がりやすくなる
といった適応です。
一方で、秋が深まると今度は反対に、熱を逃がしにくくする方向へと変化します。
これが「寒冷順化(かんれいじゅんか)」です。
寒冷順化では、体は次のように寒さに適応していきます。
・血管を収縮させて体の熱を保つ
・筋肉を小さく震わせて発熱を促す
・代謝バランスを変えて体温を維持しようとする
ランナーにとっては、この移行期に
「心拍が上がりにくい」「体が温まるまで時間がかかる」
と感じることが多いですが、これはまさに体が寒冷順化の準備をしているサインなのです。

寒冷順化の段階
寒冷順化は少しずつ進んでいきます。
おおまかに見ると、初期 → 中期 → 安定の3つの段階に分けられます。
初期段階
寒さに慣れていないうちは、手足が冷えやすく、体が温まるまで時間がかかることが多いです。
体は熱を逃がさないように血管を収縮させたり、代謝を一時的に上げたりして対応します。
この時期は、ウォームアップを丁寧に行って、筋肉と心拍をじっくり“起こす”意識を持ちましょう。
中期段階
次第に寒さに慣れてくると、皮膚温の低下がゆるやかになり、寒さによるストレス反応が小さくなります。
体は効率よく熱を保てるようになり、走り始めの違和感も減っていきます。
朝ランでも「冷たい空気が気持ちいい」と感じられたら、順化が進んでいるサインです。
安定段階
寒さにしっかり適応し、体温調整や代謝のリズムが落ち着いた状態です。
体が冷えにくく、ウォームアップ後の動きもスムーズになります。
寒さを必要以上にストレスと感じず、安定して走れる“冬仕様の体”が整います。
ポイント
寒冷順化は「我慢」ではなく「適応」です。
急に薄着で外に出たり、無理に冷水を浴びたりする必要はありません。
“少し寒い”環境に少しずつ体を慣らすことが、最も安全で効果的な方法です。

寒冷順化を促す行動・対処法
寒冷順化は特別なことをしなくても、日常の中で少しずつ寒さに触れる時間を増やすことで進みます。
ただし、急に冷たい環境に長くいるのは体に負担が大きいので、**「少しずつ慣らす」**のがポイントです。
① 朝晩の冷えをあえて感じてみる
少し肌寒い時間帯(朝ランや夜の外出)に、薄手の上着で外気に触れるだけでもOK。
冷たい空気を感じることで、体は“熱を逃がしにくくしよう”と反応し始めます。
ただし、風邪をひくほど我慢する必要はありません。「ちょっと寒いけど気持ちいい」くらいがちょうどいい刺激です。
② ウォームアップを丁寧にする
寒冷順化の初期は、筋肉や関節の温まりが遅く、心拍も上がりにくい状態になります。
いつもより**長めのジョグや動的ストレッチ(レッグスイング、アームサークルなど)**を取り入れて、
体をじっくり温めることが大切です。
走り出して「体が軽くなった」と感じるまでが目安です。
③ 入浴・サウナで血流を促す
冷えた体をそのままにせず、入浴やサウナで体温リズムを整えるのも効果的。
お湯に浸かることで末梢の血流が改善し、寒暖差への適応がスムーズになります。
入浴後の**湯冷め防止(すぐ着替える・軽くストレッチ)**も忘れずに。
④ 栄養と睡眠で回復を支える
寒さに慣れる過程では、代謝が変化してエネルギー消費が増えるため、
炭水化物・たんぱく質・ビタミンB群をしっかり摂ることが大事です。
特に睡眠不足は体温調整の乱れを招くので、夜の冷え対策+十分な睡眠でリカバリーを促しましょう。
⑤ 徐々に寒さを味方にする意識を
寒さに慣れると、心拍が安定し、集中して走れるようになります。
「寒い=つらい」ではなく、「寒さを利用して強くなる」という意識で、
この季節の変化をうまく味方にしていきましょう。

まとめ
焦らず、少しずつ寒さに体を慣らしていくこと。
それが結果的に、冬場のパフォーマンスアップとケガ予防につながります。
寒さを敵にせず、味方に。
季節の変化を感じながら、秋冬のランニングシーズンを楽しんでいきましょう。


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